和解金を支払わないフランチャイズ本部に対する債権執行

通常、訴訟上の和解は、債務を負う当事者が任意に支払うことを前提として成立します。請求額全額は支払えないが、この金額をこの支払条件なら(例えば分割払い)支払えるという時に債務を負う当事者は、支払う金額を限定し、かつ支払能力の範囲内で支払えばよいというメリットが生じます。他方、債権を有する当事者としても、強制執行の手間が省けるので、待てる程度の分割払いならそれでよいか、という考えから和解に応じます。

フランチャイズ元加盟者の代理人として情報提供義務違反を理由とする損害賠償請求訴訟を提起した事案で、フランチャイズ本部と分割支払を受ける和解をしたのに、初回から支払ってこないという、あまり常識的でない対応をされた事案がありました。こちらとしては、何かの間違いかもしれないと考え、まずは、先方の代理人に連絡する訳ですが、途中で「もう自分は代理人ではない」などと放り投げてしまわれました。

仕方がないので、強制執行するしかなくなります。このような結果になるのなら判決をもらっておいた方が良かったということになります。

まずは定番の銀行口座の差押えをしてみましたが、差押えが既にいくつも競合していました。他の債権者にも支払っていないようです。

色々と考えて、生徒から毎月の月謝を銀行から引き落とすという形での徴収をしていた本部であったため、収納代行会社への差押えを行ないました。

 差押え債権目録は次のような記載としました。

 代金回収引渡請求権の差押え債権目録
 「ただし、債務者と第三債務者との間の継続的な代金回収代行事務委託契約に基づき、第三債務者が銀行口座引落により債務者ないし債務者の加盟店の利用者から回収した授業料から、第三債務者の債務者に対する代金回収代行事務委託手数料を控除した残額につき、債務者が第三債務者に対して有する回収代金引渡請求権にして、平成××年1月20日から平成××年7月20日までの間に支払期が到来するものの内、支払期の早いものから、頭書金額に満つるまで。」

半年間程度は毎月継続的に押さえるという内容ですが、代金回収代行業者の約款で、差押えは解除事由にあたるようです。本件でも回収できたのは1か月分でした。

 和解金の回収には程遠いのですが、フランチャイズ本部は破産をすることもなく、なぜか営業は継続しています。そこで、ロイヤルティの差押えを行ないました。

 ロイヤルティ請求権の差押え債権目録
「ただし、債務者と第三債務者Aとの間のB店のCのフランチャイズ契約に基づき、債務者が第三債務者Aに対して有するロイヤルティ請求権にして、平成××年3月20日から平成××年10月31日までの間に支払期が到来するものの内、支払期の早いものから、頭書金額に満つるまで。」

 これは現役加盟店に負担をかけるので、協力してもらえる加盟店を見つける必要があります。本件では、何とか現役加盟店の協力を得られ、無事、和解金+遅延損害金を回収しました。このような本部を契約を継続しなければならない現役加盟店も被害者の一人といえましょう。

2016年10月18日